児童劇シナリオ「わ・ら・し」

学校で失敗ばかりのぼくは、少しヤケになっていた。むしゃくしゃする気持ちを抱えて
家に帰ると、見たことのない子が現れてぼくを迎えてくれた。
その子は、自分のことを、わらしと呼んで、不思議なことを次々と起こしていった。も
しかしたら・・・あの座敷童(ざしきわらし)なのか?この脚本は、無償でご提供いたします。使用される場合、ご連絡ください。

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わ・ら・し
      原作・脚本 福田 哲男     
あらすじ
 学校で失敗ばかりのぼくは、少しヤケになっていた。むしゃくしゃする気持ちを抱えて家に帰ると、見たことのない子が現れてぼくを迎えてくれた。
 その子は、自分のことを、わらしと呼んで、不思議なことを次々と起こしていった。もしかしたら・・・あの座敷童(ざしきわらし)なのか?

キャスト
・ぼく
・わらし
・ナレーター
*大道具は使わず、ぼく、わらし、ナレーターの三人だけで物語を進めることができます。また、解説でも触れますが、多人数での上演にも対応可能です。

○まったくついてないよ・・
*幕が上がる。舞台右にはナレーターが座る椅子。中央より若干下がった位置にちゃぶ台(ミニテーブル可)だけが置いてある。
*ナレーター登場。おじぎをして椅子に腰掛け、ノート(日記)を読み始める。
*ランドセルを背負ったぼくが元気なく登場。*うつむきながら歩き、おおきなため息をつく。
ナレーター 「○月○日○曜日(日付は任意)。ぼくは、もう何もかもイヤになっていた。」
ナレーター 「今朝は遅刻寸前に登校して、ろうかを走っていたら・・・。」
*ぼく、走り出す。(ぼくはナレーションの内容を動きで表現する。)
ナレーター 「先生に思いっきりぶつかって、たっぷりしかられた。」
*ぼく、さかんに頭を下げ、謝っているジェスチャー。
ナレーター 「そうじの時間は友達とふざけていて・・・。」
*ぼく、ランドセルを降ろしてからバケツと箒をもってふざけているジェスチャー。
*ぶざけていてバケツをひっくり返す。
ナレーター 「バケツの水をそうじ場所の図工室にぶちまけて班長におこられた・・・。」
ナレーター 「それに、マリコのやつ・・そんなぼくにあだなをつけやがった!暴・走・太・郎!これが一番気にくわない。」
*ぼく、ランドセルを背負う。
*ぼくは腕を組み、ほっぺたを膨らませ怒っている。思わず道ばたの石を蹴る。しかし、石が大きくて蹴った足を押さえてとびはねるジェスチャー。
ナレーター 「まったくついていないよ。」
*ぼくは、肩をすくめる。
ナレーター 「なんだかんだで家に着いた。ぼくの家は両親がそれぞれ仕事を持っているので・・だれもいないはずのぼくの家に・・・あの子がいたんだ。」
*ナレーター退場。
*わらしが中央に登場。
*ぼく、鍵を鍵穴に差し込み、ドアをあける。
○わらしはわらし?
ぼく    「ガチャガチャ・・・ただいま!・・・って言ってもだれもいないよね。」
*玄関に入り、ドアを閉めようとする。
わらし   「おかえり~。」
*ぼくの後ろから、わらしが声をかける。
ぼく    「うわ~っ!」
*ぼくはびっくりして玄関から飛び出す。
ぼく    「ちょ・・・ちょっと待て・・だれもいるわけないよね。両親ともまだ帰っていないはずだし・・きっと、気のせいだよ、気のせい。」
*ぼく、気を取り直し再びドアを開ける。
ぼく    「ただいま・・。」
わらし   「おかえり~。」
ぼく    「・・・って、いるじゃないか・・知らない子が!・・き・・きみはだれ?な・なんでここに?」
わらし   「わらし・・?わらしはわらし。」
ぼく    「わらしは、わらしって・・それはしゃれのつもり?
わらし   「わらしは、わ・ら・し!」
ぼく    「そ、そう、わらしくんね・・で、いったい、なんでここにいるの?何かご用?・・・というより、どこからきたの?」
わらし   「わらしは迷子・・。」
ぼく    「迷子って?迷子になって鍵のかかっている人の家に入り込むなんてだめだよ。家宅侵入罪だよ!」
わらし   「うぇ~~ん!」
*わらし、泣き出す。
わらし   「うぇ~~~~ん!」
ぼく    「わ・・分かったよ。泣かないでよ。迷子ならとりあえず交番へ行こう。」
わらし   「うぇ~ん!うぇ~ん!」
ぼく    「そんなに泣かないでよ。分かった分かった。とりあえず・・・そうだ!おやつを食べよう。」
わらし   「そうだ!おやつを食べよう!」
*わらしにこにこしてちゃぶ台前に正座。ぼく、とおやつを食べ始める。
○不思議なできごと
*ナレーター登場、椅子に腰掛ける。
*ぼくは、舞台中央でナレーターの読み上げる日記を動きで表現する。
ナレーター 「これが、ぼくとわらしの出会いだった。結局、わらしはぼくの家に居座ってしまった。」
*わらし、ぼくのとなりに出てきて、バンザイをしたり、飛び跳ねたりとはしゃぎだす。
*ぼくはわらしを見て、不思議そうに首をかしげる。
ナレーター 「わらしの姿は、パパやママからは見えないようだ。ぼくがわらしを紹介したら、二人ともきょとんとした顔をしていた。ママがぼくのおでこに手を当ててたから、それ以上は何も言わないことにした。」
*ぼく、自分のおでこに手を当てる。
*わらしもおでこに手を当てる。
*わらし、ちゃぶ台でぐりぐりと絵を描き始める。
*描いた絵をぼくに手渡してから、またはしゃぎだす。
ナレーター 「ある日、わらしは自分で描いた絵をぼくにくれた。お世辞にも上手とは言えないけど・・・。」
ぼく    「なに?この絵?」
わらし   「もうすぐ、そうなるよ。」
*画用紙にはホームランを打ったぼくの絵が描いてある。ぼくは、その絵を客席に見せる。
ぼく    「これって、野球のホームランの絵?」
わらし   「そう!オームラン!」
ぼく    「オームランじゃなくてホームラン。」
*ぼく、絵をちゃぶ台に置いて野球のバットをかまえるポーズ。
*わらし、ホイッスルと日の丸の入った扇子、もしくは旗で三三七拍子を繰り返す。
ナレーター 「九回裏一打逆転のチャンス。何でこんな大切な場面にぼくの打順なんだ・・・ピッチャーゴロでチームのみんなにブーブー言われるいつものパターンだ・・・来た!」
*ぼく、目をつぶってスローモーションでスイングをする。
ぼく    「カキーーーン!」
*と言いながら、バットを振り抜く。
*わらし、ボールの行方を手をかざして見守る。再び三三七拍子。
ナレーター 「ホームランだった。」
*ぼく、手を振りながら舞台を一周する。
ナレーター 「どうだ、マリコ。暴走太郎だってやるときゃやるんだ。わらしの描いた絵は本当のことになるらしい・・・。」
*ぼく、わらしとハイタッチをする。
わらし   「元気モリモリ!」
ぼく    「元気モリモリ!」
*元気モリモリは数回出てきます。ポーズを決めておくとよいでしょう。
*わらし、再びちゃぶ台で絵を描き出す。
ぼく    「わらしく~ん。今度は何を描いているの~?」
わらし   「今度はねぇ・・・。」
ぼく    「今度は~?」
わらし   「おんどうかい!」
ぼく    「おんどうかいって・・・もしかして、運動会のこと?」
わらし   「そう、そのおんどうかい。」*わらし、絵をぼくに手渡す。
*ぼく、絵を見てから客席に向ける。
ナレーター 「わらしの言っていたおんどうかいは、やっぱり運動会のことだった。そして画用紙には徒競走で一等賞を取る絵のようだった。でも・・いくらわらしでも、これは無理だ。いや、無謀だ・・なぜって、ぼくの走るレースは強豪ぞろい。絶対ペケに決まってる。ぼくは、そう思いながらスタートラインについた。」
*ぼく、徒競走のスタート位置についたポーズ。
*わらし、三三七拍子。
ナレーター 「位置について、ヨーイ・・ドン!」
*ぼく、スローモーションで走り出す。
*わらし、応援する。
ナレーター 「やっぱり、ぼくがペケじゃないか。そう思った瞬間、たっくんがこけた・・・そのたっくんにつまずいてひろくんがこけた・・・。ひろくんにつまづいて、よっちゃん。ついでに、ぼくと最下位争いをしていたはあちゃんまでがこけた。残っていたのはぼくだけ!」
*ぼく、笑顔でゴールする。
ぼく    「やった~!生まれて初めての一等賞だ~!」
ぼく・わらし「元気モリモリー!!」
*ぼくとわらし、元気モリモリポーズ。ハイタッチで喜び合う。
*ほくとわらし、ちゃぶ台をはさんで向き合って座る。わらしは、また絵を描いている。ぼくは、その絵を見て喜んでいる。
*二人で元気モリモリポーズをとったりしている。
ナレーター 「それからというもの、わらしの描いてくれた絵のおかげで、ぼくは学校が楽しくなった・・と言うより、今までより自分に自信が持てるようになってきた。絶対にうまくいく!という気持ちを持てるようになったのかもしれない。元気モリモリ!」
*ナレーター、元気モリモリポーズをいて退場。
*ぼくとわらしはちゃぶ台を挟んで座ったまま。わらしは絵を描いている。
*ぼくは、うとうとと居眠りをしている。
○さよならわらし
*効果音(目覚まし時計) 
*ぼく、目を覚ます。
わらし   「ねぇ。時間が来たよ。」
ぼく    「えっ?時間てなんの時間?」
わらし   「帰る時間。」
ぼく    「帰る時間?だれが帰る時間?」
わらし   「わらし。」
*わらし自分を指さす。
ぼく    「帰るって、わらし。だめだよ。もうちょっとここにいてよ。」
わらし   「もう、だいじょうぶ。」
ぼく    「だいじょうぶって、だれが?」
*わらし、ぼくをツンツンと指さす。
ぼく    「ぼ・・ぼくが?ぼくは、まだだめだよ。わらしがいてくれなくちゃ、何もできないよ。
*わらし、立ち上がる。
ぼく    「わらし!いかないでよ!」
*ぼく、立ち上がりわらしを引き留めようとする。わらしが描いていた絵を指さして。
ぼく    「ほら・・この絵だってまだ、描きかけじゃないか。」
わらし   「わらし・・・帰る。帰らなくちゃいけない。もう、だいじょうぶ。」
*わらしの気持ちは変わらない。
ぼく    「わらし、帰るってどこに帰るの?ここから遠いところ?帰っても、また来てくれるよね。」
わらし   「もう、だいじょうぶ。元気モリモリ。」
*わらし、元気モリモリポーズ。
*ぼく、しかたなく元気モリモリポーズ。
ぼく    「元気・・・モリモリ・・。」わらし   「それじゃ・・バイバイ。」
*わらし、手を振って歩き出す。
*ぼく、わらしに向かって。
ぼく    「わらし~~~!」
*わらし、振り返って。
わらし   「元気モリモリ!」
*わらし退場。
*ぼく、しばらくわらしが去った方向を見ているが、ちゃぶ台の絵を取り上げる。
*ナレーター登場
ナレーター 「こうして、わらしは帰って行った。わらしが最後に描いていったのは、画用紙いっぱいに描かれた大きな円だった。
*ぼく、絵を客席に向ける。
ナレーター 「だいじょうぶ。だいじょうぶ。元気モリモリ!わらしの声がぼくの心に響いていた。」
*幕が閉まる。
解説
 落ち込んでいたぼくが、わらしの登場で少しずつ自信を取り戻して元気になるという物語を考えてみました。登場人物は、ぼくとわらし、それにナレーターだけです。実はこの脚本は、子どもたちや指導者のアイデアしだいで大人数でも上演可能という要素も持たせてあります。
演出のヒント

1 わらし役の複数化
 たとえば、わらしが一人ではなく、複数人いたらどうでしょう?きっと、無邪気なわらしたちは、家の中でキャッキャッキャッと賑やかに振る舞い三三七拍子の応援も盛り上がることでしょう。
2 配役の増員
本脚本に名前は登場していても、役として設定されていない人物(たとえばマリコ・先生・両親・野球部の仲間・徒競走のメンバー・運動会の応援団」を登場させても面白いと思います。この場合、場面に応じた演技や台詞は子どもたちの話し合いの中から自然発生的に生まれてくることでしょう。
 ただし、ここで忘れてならないことは、劇作りのすべてを子どもたち(演者)に丸投げしないことです。アドリブで生まれた台詞であっても、演者や観客に不快な思いをさせてはいけません。これは劇作りの鉄則です。監督としての指導者の確認・調整が不可欠です。
衣装の工夫
 衣装は、ぼくとナレーターは普段着、わらしは、はんてんに小さい子がするようなちょんまげ、靴の代わりにビーチサンダルを履くとそれらしく見えると考えます。
 小道具は、応援用の日の丸を描いた扇子か紅白旗、それに三三七拍子ようのホイッスルがあるとよいでしょう。もちろん、わらしが描く絵は事前に用意しておきます。
 どうぞ、子どもたちといっしょに劇作りを楽しんでください。…

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